メッセージ

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犬飼 健太郎

株式会社パナ・ケミカル 代表取締役
一般社団法人資源プラ協会 代表理事
環境カウンセラー(環境省)

株式会社パナ・ケミカルの創業者犬飼重平が、40年以上前に、東京築地市場で始めた発泡スチロールリサイクルは、魚箱を専用処理機で1/50熱減容しインゴット化し、再びパナ・ケミカル買い取るというというコストと効率を両立させた画期的なシステムでした。

それは瞬く間に、魚市場、デパート、スーパーマーケット、廃棄物業者に広がり、現在、月間3000トン、2000社の全国ネットワークに成長し、日本のマスコミのみならず、海外のシンクタンクなどでも紹介され、システムの輸出も行われています。

2020年、創業者の犬飼重平の逝去をきっかけに、今まで弊社が初め、約8割のマーケットシェアを運営する日本独自の発泡スチロールリサイクルを「J-EPS recycling (ジェイ イーピーエス リサイクリング)として再定義し国内だけでなく海外に発信していこうとプロジェクトを始めました。また、「世界でも評価されるこの独自のリサイクルシステム」を全国の2000社の数々の困難を乗り越えてきたお客様と共有し、毎日の仕事に意味をつけたいという思いが強くありました。現在、世界では脱プラ、海洋プラが叫ばれ、リサイクル処理困難物とされている発泡スチロールが、日本ではなぜ90%のリサイクル率をキープできているのか注目が集まっています。

 

経産省が主導して設立されたアジアのシンクタンクERIAでも、このJ-EPS recyclingが「海洋プラスチックを抑制する日本独自のリサイクル技術」として取り上げられています。

今後も、「リサイクルは技術だけでなく人の環が創り出す」という創業者犬飼重平の言葉とともに、このJ-EPS recyclingを発信して行きたいと思います。

リサイクルは技術だけでなく人の環が創り出す。

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本堀 雷太

本堀技術士事務所 代表
技術士(衛生工学部門、生物工学部門)
環境省環境カウンセラー(事業者部門)

労働衛生コンサルタント(労働衛生工学部門)
株式会社 パナ・ケミカル 技術顧問

一般社団法人 資源プラ協会理事(技術担当)

プラスチックリサイクルのトップランナー「J-EPS」はなぜ成功したのか

19世紀にプラスチックという”新素材”が登場して以来、わずか150年程の間に人類の生活様式は劇的に変化し ました。我々の身の回りにはプラスチック製品が溢れ、今やプラスチックの無しには人類の発展は望むべくもありま せん。プラスチックは人類史上、短期間にとてつもなく大きな恵みをもたらした”奇跡の素材”であるといえます。


しかしながら、昨今、河川や海洋などの自然環境中に逸出したプラスチックによる生態系の破壊などの環境汚染 が深刻化し、社会のプラスチックへの視線は厳しさを増しています。また、世界のプラスチック廃棄物の大部分を飲 み込んで来た中国による輸入規制「国門利剣」に端を発した国際的なプラスチック廃棄物の物流環境の変化は、2 021年1月より施行された改正バーゼル条約により新たな局面を迎えています。

我が国のプラスチック産業は1950年代から本格化し、プラスチック産業の発展と共に1960年代にはプラスチック リサイクルビジネスの萌芽が見られました。これまで様々なプラスチックリサイクルの事業化が試みられ、数多の技 術が市場に投入されてきましたが、多くは失速し密かに姿を消していきました。その中で、我が国発祥の「発泡スチ ロール(EPS)のマテリアルリサイクルシステム(J-EPS)」はプラスチックリサイクルの数少ない成功例の一つとし て市場で広く認知され、現在もマテリアルリサイクルのトップランナーとして走り続けています。では、なぜJ-EPS は成功したのでしょうか?

プラスチックのマテリアルリサイクルが持続的な事業として成立するためには、「経済的な合理性」と「技術的な 妥当性」の双方を満足する事が必須の要件です。


「経済的な合理性」とは、「処理物の物流(商取引)が経済的な合理的判断に基づき持続的に行われる仕組み」 に依拠している事でありまして、補助金や助成金に依存し続けて資源循環の輪を”無理やり回す”のではなく、あく までも「市場での公正な取引(需給バランスに基づく経済活動)」によって静脈物流の輪を維持するための基本的 な原則です。したがって、プラスチックのマテリアルリサイクルを持続的に営むためには、プラスチック廃棄物の処 理物や再生プラスチック原料が安定に取引される必要があり、この取引要件の一つが「品質」という事になります。


J-EPSはこのマテリアルリサイクルにおける「品質」というものに最初に着目したビジネスモデルであり、品質 に基づく経済的な合理性を確立する事でこれまで数十年にわたって国際的な資源循環の輪を安定に維持してき ました。今やアジア地域のみならず我が国から遠く離れた欧州や北米地域まで廃棄発泡スチロールより”製造され た”ポリスチレンインゴット(PSインゴット)は輸出されており、”地球規模での資源循環の輪”は拡大しつつあります。


このプラスチックのマテリアルリサイクルにおける品質は、処理作業に従事する「ヒト」とヒトが使いこなす「技術 (処理技術と処理装置)」によって生み出されます。ヒトの優れた能力を処理技術や処理装置が支える形がプラス チックのリサイクルの理想形であり、従来の「廃棄物を処理する」という視点から一歩進んだ「廃棄物を原料に資源 (工業原料)を製造する」という大きな転換を促す事になります。

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このヒトと技術のマッチングこそが「経済的な合理性」と並ぶ必須要件である「技術的な妥当性」という事にな ります。J-EPSにおいては、発泡スチロールというポリスチレン(PS)を発泡成形した素材を如何にして脱泡減容し、 再生処理に適した形状に成形(インゴット化)するのかという技術的課題に対して、高い技術を保有する専門メーカ ーが、商品であるPSインゴットの取引の実務を担う専門商社と共に切磋琢磨しながら技術や装置を開発してきま した。「まず技術ありき」では無く、実際に処理作業を担う現場のニーズや意見を商社が汲み上げ、本当に必要と する技術のスペックをメーカーが作り上げていくという”地道な挑戦”を長きにわたって積み上げてきたのです。

 

「処理を担う処理業者」、「物流を担う専門商社」、「技術を担うメーカー」の三者が共に創り上げた技術がJ-EPS を支えていると言えましょう。そして、この挑戦は現在も弛む事無く続けられています。つまり「技術的な妥当性」 を満たすためには、「単に処理が出来る能力」ではなく、「経済的な合理性に基づいた取引に供する事が可能なレ ベルの品質を有する処理物を生み出す能力」を保有している事が必須であると言えます。


また処理能力のみならず、作業者が安全かつ衛生的な環境下で作業に従事できる仕組み(労働安全衛生)や、 処理に伴って周辺環境を汚染したり、エネルギーなどの投入資源の無駄が生じたりしない仕組み(環境調和性)を 満たす事も重要な管理項目です。J-EPSを担う発泡スチロール減容処理装置は長きにわたる開発の歴史からこ れらの事項についても十分に対応しており、他のプラスチックリサイクル装置と比べても、遥かに技術的な進歩を 遂げていると断言できます。
ここまでお話ししました様に、「経済的な合理性」と「技術的な妥当性」の双方を満足したが故にJ-EPSは数十 年にわたってプラスチックのマテリアルリサイクルのトップランナーとして走り続ける事が出来たのです。


プラスチックのリサイクルを取り巻く環境は劇的に変化し続けており、この変化の荒波を乗り越えるためには、J -EPSで確立した「ヒト」と「技術」のマッチングによる「処理物の品質向上」が鍵となります。品質の向上により処 理物の市場における取引価値が向上し、結果として経済的な妥当性を満たす事に繋がるのです。


J-EPSは我が国が誇るプラスチックのマテリアルリサイクルに関する総合的なシステム体系であり、ヒトの管理、 技術の運用、品質の管理、物流の管理、市場での取引、再生原料の用途開発、周辺環境との調和、資源の有効利用 などの多様な課題への解決策を明確に提示しています。また、製造されたPSインゴットは優れた再生ポリスチレン 原料の基材として世界各地へ輸出されており、我が国が戦略的な輸出資源(化学製品)としての地位を築いてい ます。


この優れたリサイクルシステム体系を次の世代に継承し、我が国が世界的に展開する環境戦略の礎として運用 する事が我々に与えられた使命です。まだまだ”挑戦”は続きます!

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平田 耕一

一般社団法人 資源プラ協会 陪席参与

エコシスLOBBYひらた事務所

株式会社テクノファ技術顧問/講師

(元職:エコシス・コンサルティング株式会社代表取締役)

環境プランナーERO

SDGsインテグレータ(GRI)

防災士

安全第一・SAFETY-FIRSTを刻む

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”安全第一”…。緑十字とともに製造工場や建設現場で掲げれらる-それは見慣れた存在である。弊職はこの“SAFETY-FIRST”をビジネス・パーソンになりたての時期にとことん、それこそDNAに刷り込むがごとく叩き込まれた。その会社は世界を代表する総合化学会社で、ベトナム戦争時に“エージェント・オレンジ“という強力な枯葉剤を米軍に提供した技術力抜群かつ戦後賠償という脛(スネ)に傷持つ会社だ。

 

刷り込まれたそれは、「安全はすべてに優先する!それが莫大な利益を得るものであってもひるまない。その製品・サービスが、社会・環境・ステークホルダーに不具合や不利益をもたらすものであるなら、便益と損失のバランスをいたずらにいじりまわして、自己肯定を積み重ねて合理性を求めることなく撤退し、直ちにリスクをマネジメントにてコントロールする。」だ。

安全第一のスローガンは、USスチールが20世紀初頭に、労働災害の悪化は、やがて品質や生産性に影響を及ぼす。なので当時主流の“生産第一・品質第二・安全第三“のプロトコルを真逆にしたことが起源とされている。弊職に刷り込まれたDNAには、そういう漠然とした掛け声に留まることなく、“エージェント・オレンジ“で米軍と共に戦後賠償を粛々と続ける総合化学会社のコミットメント(プロミスよりも数倍の責任で対価を差し出す約束)が宿っている。皆さんは“安全第一のコミットメント”をどう標榜され、そしてどのように実践させているのであろうか

 

無責任な問い掛けで終えてしまったが、紙幅も限られているので、詳しいお話は座談会にでもとっておいてプラスチックの社会性についてお話をしたい。

 

--閑話休題--

いやもう大変…!「2050年には海洋ごみが魚の量を上回ってしまうぞ!そのほとんどは廃プラスチックだ!」、「レジ袋や包装材、それにプラ製の簡易カトラリー(ナイフやフォーク・スプーンなど)や食器は諸悪の根源。まずは有料制(つまり使う事への罰金)と禁止法で根絶するぞぉ」なんて切り取り情報ばかりが目につく。

 

弊職の専門分野であるTHE GLOBAL GOALS(SDGs)も廃プラと海洋ごみ、それに太陽光発電と電気自動車が基軸のように語られる。17パネルのゴールと169のターゲットがあるにも関わらず…。インターネットで情報はたくさんあるのに玉石混淆で、受け手は千里眼はおろか、選択眼すら作動セズ…。大衆迎合政治が嘯く(うそぶく)メッセージを真に受けて、それが世界を救う第一手段のようステロタイプに「ゼロか?100か?」「プラスチックを使うの?使わないの?どっち!?それで地球の運命は決まるのヨ!!さぁどっち」の二社一択で判断の立体的思考を中断して、社会正義に参画したとの自己満足で何かの罪滅ぼしに溜飲を下げている。

果たして、我らがビジネスの素材・商材となるプラスチックは、そんなに悪玉なのか?

 

プラスチック(英語:plastic)の語源はギリシャ語の漆喰でカタチを作る…型に流し込んで圧力や熱を加えると型通りの形状で抜き取ることができる可塑性材料にたどり着く。先人の創出した便利なマテリアルであるそれは、19世紀終わりにセルロイドという商材で初めて商品化され、20世紀になってすぐにベークライト(商品化二番手)、そのあとは経済発展と文明浸透を謳歌し、三番手、ポリスチレン(1938商品化四番手)…あとはもう一気呵成に、種類や用途・機能と効果を広げに拡げた。樹脂種や鼻薬(比喩的表現です!要は機能性添加剤などの意味)が多岐に渡ったことは、便利さや特異さを探求した反面、処理再生の難題やナニもココまでしなくても、ナニもコレまで作らなくても、という揺り戻しの反動を生んだ。

 

まさに、いま現在がその揺り戻しに、何かを悪者にしたいヒステリー曲線のカーブが合致して最大級の逆回転“プラスチック忌避思考”が起こっているのかもしれない。私たちプラスチックに関わるビジネス・パーソンは、この21世紀にては適材適所と適所適材で、プラスチックの循環利用から始めて、ベストミックスな政策を誘導していかねばならぬ。先人の創出したそれを、悪者扱いされることなく、持続可能な人類への効能を探究していかねばならない。

 

もう一度、ギリシャ語の語源を調べてみるとプラスティコスには“成長する”、“新しい形を創る”、そして“発展する”という意味もあるらしい。まさに私たち21世紀の関係者は、“こちらの意味”でプラスチックを武器に世の中に利便をコストや負荷を上回る便益を提供していこうではないか。

 

「プラスチックを利活用する製品とサービスが、社会・環境・ステークホルダーに不具合や不利益を無闇に押し付けること無く、便益と損失のバランスを平易に解説して、消費者サイドの理解を越えて納得までを獲得すること」…そう、安全第一・SAFETY-FIRSTを刻んでいこう。

それが私たちの展望である。