有事にも備える発泡スチロールリサイクル ― 50年続く「J-EPS recycling」の仕組み
- panachemical
- 10月10日
- 読了時間: 3分
J-EPS recyclingは、発泡スチロール(EPS)の再資源化を通じて、50年にわたり国際的な資源循環を続けてきました。その仕組みは、シンプルでありながら非常に合理的です。
まず、発泡スチロール製の魚箱などが大量に発生する現場に、専用の処理機を設置します。
この機械で発泡スチロールを熱で1/50に減容し、固形化した「インゴット」という形にします。
私たちはこのインゴットを買い取り、海外のコストの低い地域で再び原料化。
そして断熱材や額縁など、需要のある国や地域で建材として再利用しています。
この国際循環モデルにより、単に「廃棄物を減らす」という目的だけでなく、資源を輸出することで外貨を生み出す――。
そんな日本発の持続可能なリサイクルビジネスとして、長年にわたり安定して機能してきました。

▪️国内循環への期待と「有事の資源」としての可能性
近年、政府による「国内循環」への取り組みが進められています。
国内での資源活用を高めることは、持続可能な社会に向けた重要な方針のひとつです。
一方で、発泡スチロールのような軽量素材では、再資源化のコストや再利用の需要バランスなど、現実的な課題も残されています。
そのため、私たちは国際循環と国内循環を対立するものではなく、互いを補い合う仕組みとして考えています。
たとえば、台湾有事などで原油の輸入が滞れば、プラスチックの新規製造が難しくなります。
同時に、インゴットの輸出も制限されるでしょう。
そのような時こそ、国内に保管されたJ-EPSインゴットを再利用し、国内で断熱材などに加工することができる――。
まさに「非常時の国内資源」として機能する可能性があるのです。
▪️断熱材としての確立された技術
東日本大震災の際、仮設住宅にとって断熱材は欠かせない存在でした。
あの経験を経て、現在では発泡スチロールそのものを主構造材として住宅を建てる技術も確立されつつあります。
法的な規制や運用上の条件は残るものの、技術的にはすでに実現可能な段階にあります。
J-EPS recyclingのインゴットから断熱材を製造する技術も、国内外で確立されています。
つまり、平常時には国際的な資源循環の一翼を担い、非常時には国内で建築資材として即時に活用できる――
この二つの機能を兼ね備えたリサイクル体制こそ、私たちが50年をかけて築き上げてきた J-EPS recyclingのひとつの到達点 であると考えています。
▪️おわりに
J-EPS recyclingの仕組みは、「平時の国際循環」と「有事の国内資源」という二つの顔を持つリサイクルシステムです。
これからも私たちは、発泡スチロールという身近な素材を通じて、社会の安心と持続可能な循環型社会の実現に貢献していきます。



コメント